2002年 11月のフィールドノートから

11月10日(日)晴れ 笠利町大瀬海岸

 久しぶりに風もなく、いい天気。陽気に誘われて大瀬海岸にやってきた。早朝、途中で浦の池をのぞいたら、サギの集団ねぐらの中に1羽、冬羽のアカガシラサギがいた。朝から珍しい客を見つけるととても気分がよい。何かいいことありそうな予感である。

 大瀬の満潮は11時半頃、その2時間前から汀線近くに居座り、潮に追われてシギチが近づくのを待つ。多いのはハマシギとメダイチドリ。次いでトウネン、アオアシシギ、キョウジョシギ、シロチドリか。遠くにムナグロが見える。代わりに常連のダイゼンの姿はない。ミサゴが3羽キチッキチッと鳴きながら空を舞っている。うちの1羽が海面にダイビング。見事に爪で魚をキャッチした。徐々にシギチが寄ってきた。ハマシギ、トウネンに混じって、ソリハシシギやコチドリもいる。おや、足が黄色でトウネンよりもさらに小さいシギがいるぞ。オジロトウネンだ。デジスコにトライするが失敗。ボクの腕では、こんなにちょこまか動くシギをうまく捕らえることができない。

 干潟を堪能し、背後の公園に場を移す。ツグミ、シロハラ、ウグイスと、冬鳥がそろってなかなか賑やかである。アカモズの亜種シマアカモズやジョウビタキ、ルリビタキにアトリ、さらにビンズイ。ヒヨドリも年中いる亜種アマミヒヨドリに加えて、この時期には本土産の亜種ヒヨドリも混じる。公園は鳥の声に満ちている。モクマオウの枝先を動く小さな鳥影を発見。メジロかなと思って双眼鏡を当てると、違う! ムシクイだった。さて、おまえは何者? じっくり観察しようにも、相手は始終動き回るし、光線も逆光気味でよくわからない。翼帯に黄色い筋はない。キマユとカラフトを外す。頭部と背中が同様なオリーブ褐色。不明瞭な汚白色の翼帯が1本。エゾを外す。頭央線はどの角度からも確認できない。センダイをはずす。飛来したメジロよりも若干大きく感じる。メボソと結論づける。鳴かないムシクイは本当に識別に困る。いつか奄美でイイジマを見つけたいのだが、バンディングで捕まりでもしない限り、わからないだろうな。

 森田さん一家が遊びにきた。前川にオシドリがいるというので、行ってみることに。朝一番に見たときにはコガモとオカヨシガモしかいなかったのだが……いるいる、オシドリがたくさんいるではないか。オスが9羽に、メスが13羽。奄美でこれだけの数のオシドリを観たのは初めて。とても嬉しくなる。

 結局、この日大瀬界隈で観た鳥は47種。とても充実した一日であった。

▲メボソムシクイと思われるムシクイ。逆光気味……。

11月18日(月)曇り 笠利町大瀬海岸

 珍しく仕事が忙しく、なかなか鳥を観に行けない。今月は大瀬海岸にばかり来ているが、これもバンディングが主たる目的。なにしろ先週、ここ大瀬で高さんがハイイロオウチュウを見つけたのには驚いた。そのときばかりは仕事を途中で放り出して駆けつけたが、残念ながら観ることはできなかった。幸いそのときはシラガホオジロのオスを見つけることができたので何とか溜飲を下げることができたけれど、今年一番悔しい見逃しであった。

 今年は小鳥類の当たり年らしく、いろんな鳥が出現している。これならばたくさん鳥がかかるかもという期待も込めて昨日から網を張っている。案の定、昨日は38羽の鳥に足環をつけることができた。びっくりしたのはアカショウビン。おそらく亜種アカショウビンだと思うが、11月半ばにこの鳥がかかるとは予想だにしていなかった。多かったのはメジロ。これも留鳥の亜種リュウキュウメジロではなく、亜種メジロ。群れで本州から渡ってきたらしく、過半数はこの小さな旅人に足環をつけたのだ。

 本日も朝から、メジロ、シロハラ、ルリビタキ、ウグイスなどが順調にかかっている。ノゴマがかかったのも嬉しかった。北海道から渡ってきたのだろうか? 奄美では少数が越冬しているが、潜行性が高いために、なかなかお目にかかれない。昨日のセンニュウもそうだが、こういう鳥はバンディングでつかまることで、その存在がはっきりするのだ。その後も、ビンズイ、アオジなどがかかり、本日の成果は23羽。

 二日間で61羽と、上出来のバンディングであった。

▲バンディングで捕まったノゴマのオス。