8月9日 金作原
8月4日から5日にかけて奄美大島の北部を通過した台風5号は久しぶりに大きな台風だった。幹線道路でさえ各所で冠水や土砂崩れが発生して交通が寸断されたくらいなので、林道は大きな影響を受けた。久しぶりに金作原に行こうと思っても、知名瀬からアクセスする道路は通行不能の状態であり、里集落から中央林道へ上がっていくしかなかった。台風でふだんよりも荒れた未舗装の中央林道をゆっくり車で走っていると、前方の路肩から1羽の鳥が飛び立った。オオトラツグミだ。臆病なこの鳥は、人が近づくとすぐに姿を隠してしまう。この個体もそのまま林内へ逃げていくのだろうと思っていると、20mほど先の路上に着地し、なんとのんびりエサを探しはじめた。改めて双眼鏡でのぞいてみると、全体的に幼い感じで、今年生まれの幼鳥のようだ。警戒心の薄い幼鳥のおかげで、じっくり観察することができた。
金作原林道の入口で車を停め、徒歩でゲートの脇を通っていく。頭上かなり近くからカラスバトの声が、遠くからはズアカアオバトの声が聞こえる。だみ声につられて前方の梢をのぞくと、ルリカケスの姿が。朝の日を浴びて、青紫色が実にきれいだ。と、左手の幹をつつく音が聞こえてきた。オーストンオオアカゲラが朝の食事を探しているようだ。しばし見とれていると、シリリリリとサンショウクイの声。それに導かれるようにして、メジロ、シジュウカラ、ヤマガラの混群が四方を取り囲む。至福の瞬間。手前の枝に1羽の見慣れない鳥がやってきた。ナニモノかと双眼鏡を当てると、キビタキの幼鳥である。カメラを構えても逃げず、写真を撮らせてくれた。さらに歩いていると、斜面をなめるように飛ぶ鳥を発見。アカヒゲである。夏のこの時期、キビタキもアカヒゲも鳴かないので存在がわかりづらいが、早朝にゆっくり探せば観察は可能だ。
8月26日 ハンミャ島
毎夏恒例のハンミャ島での海鳥調査。今年から国立公園の第二種特別地域となり、キャンプなどが難しくなった。さらに地権者である与路集落の区長さんによると、ハンミャ島では原則キャンプは禁止だという。アナドリもオオミズナギドリも基本的に親鳥は夜、島に戻ってくるため、野営は必須となる。今回はなんとか許可をもらったが、来年以降は調査のやり方を考え直さねばならないかもしれない。
オオミズナギドリが繁殖しているのは、オオハマボウ、アダン、ソテツなどが生えた赤土の急斜面である。中はかなり蒸し暑く、昼間ここによじ登ると、全身から汗が噴き出す。汗を拭いていると、目の前を赤い鳥が横切った。アカヒゲだ。オスが2羽で鳴き交わしている。ハンミャ島は面積13ヘクタールの小島だが、毎年ちゃんとアカヒゲが繁殖している。地面でカサコソいう音がするので目をやると、大きめのトカゲがいた。トカゲはどの種もよく似ており、同定が難しいが、こんな低地にいるのでオオシマトカゲだろうか。オオミズナギドリの巣穴は決して多くはない。毎年定点で測っている場所では24巣を見つけた。そのうちヒナが確認できる巣が2つに、親鳥のいる巣が1つ。あとは深くて、よくわからない。昼間だけの調査ではやはり限界がある。