2019年 4月のフィールドノートから

*番外編*4月1日~4日 西表島

 四半世紀ぶりの西表島。圧倒的な自然が残る島は、基本的にはほとんど変わっていない印象を受ける。西表の場合、林道が少ないので、森の中に入っていくのが難しい。その分、自然が守られているともいえるが、生き物を観察するのは案外難しい。野鳥でいえば、オープンスペースに出てくるカンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイなどは比較的観やすいが、森林性のオオクイナやキンバトはなかなか観られない。両生類だと、サキシマヌマガエル、ヤエヤマハラブチガエル、ヤエヤマアオガエル、アイフィンガーガエルについては姿は観れずとも声は簡単に聴けるが、コガタハナサキガエルとオオハナサキガエルについてはまったくかすりもしなかった。爬虫類はサキシマハブとサキシマキノボリトカゲくらい。セマルハコガメや他のヘビ、トカゲにも遭いたかった。

 今回の目的のひとつはサソリを捜すことだったが、それもかなわず。それでもリュウキュウオオイチモンジシマゲンゴロウと3種類のホタルが観られたのでよしとするか。じっくりと腰を据えて生き物と向き合いたい島である。

▲亜種イシガキヒヨドリはどこにでもいる。しかし、こんなにも色黒だっけ?
▲サトウキビ畑のムラサキサギ。数は少なくないが、案外目立たない。大原にて。
▲ズグロミゾゴイの成鳥。干立の集落で。
▲こちらはズグロミゾゴイの幼鳥。同じく干立の集落で。
▲カンムリワシの成鳥。浦内集落近くの電柱で。
▲カンムリワシの幼鳥。浦内川にて。
▲浦内側沿いにはまだかろうじてセイシカの花が残っていた。アマミセイシカよりも赤みが強い。
▲未明の白浜林道でヤエヤマボタル。このホタルは夕暮れと同時に光るので、この時間帯に光っているのは珍しい。。
▲かなり明るく光るオオシママドボタルの幼虫。名前の割に奄美大島には分布していない。
▲キベリヒゲボタルの幼虫だと思われる。暗闇だとかすかに光る。
▲サソリは観られなかったが、タイワンサソリモドキには出合うことができた。

4月15日 奄美市笠利町万屋農耕地

 望楼台の探鳥会でサシバやハイタカ、ツバメの北帰行を見送ったあと、須野から万屋の農耕地で鳥を探す。数日前にコシャクシギの情報があったが、どこを捜しても見当たらない。ある畑に肥料をまいており、30羽ほどのツバメチドリが群れている。肥料に集まった虫たちを捕食してるのだ。奥のほうにはオオチドリの姿が。夏羽に移行している最中だが、畑の土の色と同化しており、遠いこともあって、ちょっと目を離すとどこだったかわからなくなる。近くのスプリンクラーには夏羽のノビタキの姿が。まさに渡りの最盛期の感。

▲ツバメチドリが30羽ほど群れていた。
▲奥にはオオチドリの姿も。もう1羽、冬羽の個体もいたらしい。
▲スプリンクラーの上から地面の餌を狙って戻ってきたノビタキ。

*番外編*4月24日~27日 中之島

 モズの調査でトカラ列島の中之島に行ってきた。カツオドリの調査で中之島と目と鼻の先の平瀬には行ったことがあるのだが、中之島への上陸は初めて。トカラ列島で一番大きく、人口も一番多いこの島にようやく足を踏み入れることができた。中之島の御岳は979mあり、奄美大島の最高峰湯湾岳よりも285mも高く、屋久島より南では最も高い山である。そのせいか山頂は雲の中に隠れていることが多く、滞在中はほとんど観ることができず、最後の帰る日の朝にようやく拝むことができただけ。いつか天気のよいときに登ってみたいものである。

 全島リュウキュウチクの藪が多く、そこでウグイス、アカヒゲ、イイジマムシクイなどがさかんにさえずっている。竹藪の中は薄暗いのでこれらの鳥たちは終日鳴いており、実に鳥が多い島という印象を受ける。アカヒゲ、イイジマムシクイとともに中之島を代表する鳥がアカコッコだろうが、こちらはあまり多くないのか、探すのに苦労する。今回の目的のモズも生息数は決して多くはなく、十分な数のデータをとることができなかった。リュウキュウキビタキもあまり多くはないようだ。

 春の渡りの時期だったこともあり、シマアジ、アリスイ、コホオアカ、キマユホオジロ、コムクドリなどの渡り鳥とも出会うことができたのはラッキーだった。奄美大島から遠いのが難だが、また訪れてみたい島である。

▲イイジマムシクイは島中のいたるところでさえずっていた。
▲アカコッコは少なく、遠くでさえずっている個体をかろうじて観ることができた。
▲キマユホオジロあたりが出ると、いかにも離島らしい。