2003年 2月のフィールドノートから

2月9日(日) 宇検村湯湾

 湯湾集落周辺での探鳥会は天気に恵まれ、春めいた一日。陽気に誘われたのか参加者も鳥も多く満ち足りた催しとなった。参加者は満開のヒカンザクラに群れるメジロや、冬鳥のトラツグミなどを堪能することができた。

 散会後、数日前に確認されたヒレンジャクを観に行ってみると、2羽でちゃんとお出迎えしてくれた。烏帽子のような冠羽に隈取のような鋭い目つき、尾の先端の緋色も鮮やかでスター性十分の鳥である。しばらくヒレンジャクを観察していると、近くから聞きなれない鳥の声が。双眼鏡を合わせてびっくりのギンムクドリ。この迷鳥もぽかぽか陽気に浮かれたのだろうか。

▲ギンムクドリのオス(左)とメス(右)がタンカンをついばむ。

番外編 2月15日(土)~18日(火) 出水

 毎年2月に恒例となっている山階鳥研による出水でのバンディング調査のお手伝いに出かける。調査は11日から20日まで行われているが、15日は江内の網場をたたみ16日に米ノ津川に張り替える。一番人手の必要な折り返しのところで加勢に参上した次第だが、15日は天気が悪く午前中に網を撤収したとのこと。午後に到着したときにはすでに皆さん、休日モードなのであった。その日は調査もせず、鳥観もせず、温泉に入って酒を飲むだけ。極楽で申し分ないが、なにをしに来ているのだろう。

 16日は朝から小雨交じりの寒い日。昼過ぎから天気がよくなるとの予報を信じ、網張りは午後から。午前中は東干拓中心に鳥観。ツルは帰り始めているとのことで、いつもよりも数が少ないように感じる。ナベヅル、マナヅルに混じってクロヅルの姿を発見。遠くにはコハクチョウやクロツラヘラサギの姿も見える。ツクシガモが群れている水を張った畑の手前にハマシギの群れ。なかにヨーロッパトウネンが入っているという話を聞き、丹念に探してそれらしき姿を確認。予報はあたり午後から天気が回復してきたので、米ノ津川の河川敷の葦原に15枚の網を張る。張った途端にメジロとエナガの群れがかかる。

 17日は終日バンディング。朝一からイカルやモズ、ホオジロなどがかかり、期待できる感じ。次の見回りではアリスイのリターンをゲット。去年もここで捕まった個体である。それにしてもアリスイって鳥離れした異様な格好だよな。手に持つと首を伸ばして、ぐにぐにとまわし始める。英名wryneckと呼ばれる所以であるが、鳥というより爬虫類を思わせる奇妙な仕種である。日が高くなってからは鳥のかかりが悪くなったので、拠点として使わせてもらっているクレーンパークを見学。

 18日朝一の見回りを終えて帰路につく。今日もまずまずの天気なので、ツルの北帰行がまた加速するかもしれない。

▲アリスイはカメラが気になるらしく、首を伸ばしてカメラ目線。

2月23日(日) 名瀬市古見方

 12月に続き、古見方地区でバンディング。もう渡りが始まっており鳥の数は少なめであるが、鳥が群れている畑を見つけたので捕獲数は多い。その畑にはテリミノイヌホオズキの実がたくさんなっており、それを目当てにヒヨドリ、シロハラ、ツグミ、キジバトなどが降りているのだ。捕まえやすいのは結構なのだが、この実を食べた鳥に糞をかけられたら悲惨。紫色のインクのような色素で手も服もしっかり染まってしまうのだ。しかもなかなか落ちない。いたるところが被害にあってしまった。

 さて、午後の見回りでとんでもない大物がかすみ網にかかっているのを発見。なんとサシバである。網にかかったヒヨドリを襲おうとやってきて、誤って自分も引っかかってしまったらしい。通常、このくらい大型の鳥だと網の目にはかからないものだが、ドジなサシバが網の棚に落ちてもがいているのが遠目からもよくわかる。しかも、この個体、珍しい暗色型である。逃げられないようにダッシュして、なんとか捕獲に成功。

▲全身茶褐色の暗色型はとても珍しい!

2月26日(水) 龍郷町某所

 アマミヤマシギのテレメ調査中、同行者の森田さんが車のライトに飛来した昆虫を目敏く発見。見ると、ケブカコフキコガネのオスではないか。いままで見たいと思っていたのに探し出せなかった昆虫だ。車を止めて待っていると短時間で11頭が飛来。生憎珍しいメスは来なかったが、意外な収獲にほくほくである。

▲ケブカコフキコガネのオス。立派な触覚が特徴的。