2004年 7月のフィールドノートから

7月9日(金) 某所

 ここ2週間ほどは鳥よりも虫を追うことのほうが忙しい。梅雨明け後の数週間はいろんな昆虫たちが活発に活動する時期なのだ。フェリエベニボシカミキリを探したり、アマミトラハナムグリを追いかけたり、アマミシカクワガタを狙ってみたり。標本には興味がないので基本的には採集はしない。捕まえる場合も、飼育して観察するのが目的。このところ島のあちらこちらで虫屋さんを見かけるが、彼らは旅費まで払って採集にきているわけで、見られたらラッキーというスタンスとは気合の入り方が違う。殺気すら感じる。そんな殺気が恐いので虫屋さんのいるところは極力避けて通るようにしている。するとただでさえ見つけにくい虫はますます見づらくなる。ってなわけで、いつまで経ってもなかなかお目当ての虫に出逢えなかったりする。ま、それはそれでよいのだが。

 きょうはトンボを探すために某水辺にやってきた。目当てのトンボは・・・いたいた、ハネナガチョウトンボである。国外では台湾やベトナムに生息しているらしいが、国内では奄美大島にしか生息していないトンボなのだ。しばらく待ち水草に止まったところでビデオに収める。

▲国内では奄美大島でしか確認されていないハネナガチョウトンボ。

番外編 7月12日(月)~16日(金) 石垣島・宮古島

 南の島の夏鳥の代表はなんといってもアジサシ類であろう。奄美でもコアジサシ、ベニアジサシ、エリグロアジサシが繁殖しているし、ここ数年はマミジロアジサシが毎年確認され、先月は台風の影響でセグロアジサシの若鳥も保護された。しかし奄美でもなかなか出逢うことができないアジサシもいる。そんなヤツらをどうしても観たくなって、石垣島と宮古島に行くことにした。

 石垣島は6回目の訪島であるが、真夏の7月にははじめて。さすがに暑い、そして観光客が多い。奄美と違ってメジャーな観光地なんだと再認識する。その観光客の大部分は海か近隣の離島が目的なのだろうけど、自分は違う。昼は石垣港の周辺をひたすらうろうろし、夜は山に入る。鳥屋も虫屋もいないのでどこへ行ってもほとんどひとりきり。石垣島での目当てはオオアジサシだったのだが、初日に石垣港で飛んでいる姿を簡単に見ることができた。さすがに大きく、ゆうにユリカモメくらいはある。潮の引いた新川河口でも、遠くの砂地にコアジサシと一緒に降り立っているのを観察できた。念願のセマルハコガメまで観ることができ、大満足。

 隆起サンゴ礁のため植生が貧相な宮古島はいままで敬遠していたため、このたびが初めての訪島となる。なにはともあれ、東平安名岬の沖の岩礁で繁殖しているというクロアジサシを観に行く。保良漁港の先にいくつか岩礁がある。がしかし、双眼鏡でのぞく限りエリグロアジサシしか見えない。フィールドスコープで観ても結果は同じ。そのはるか先にもいくつか岩礁が横たわっている。あっちだろうか? 遠すぎて双眼鏡ではよくわからない。スコープの倍率を最大の60倍まであげてのぞくと、焦げ茶色の鳥がたくさん飛び回っているのがわかる。クロアジサシである。その数、100羽ではきくまい。ときおり下面が白い同サイズのアジサシが飛んでいるのはマミジロアジサシだろう。本当はもっと近くから観てみたいところだけど、繁殖地で乱舞する姿を確認できただけでよしとしよう。宮古島では近距離でキンバトに逢えたのもよかった。

 活気があって情緒豊かな石垣島も冗談みたいに海の美しい宮古島もいいけれど、なにかがちょっと物足りない。奄美大島に帰ってきてほっとしたのは、広大な森林が残っているということ。南西諸島随一の森こそ奄美大島の宝だ。

▲石垣島新川河口のオオアジサシ。遠いけれど、前にいるコアジサシとの体格差は歴然。
▲宮古島東平安名岬のクロアジサシは遠すぎたので、近くの岩礁で抱卵中のエリグロアジサシの写真でご容赦を。
タイトルとURLをコピーしました