2015年 3月のフィールドノートから

3月8日 龍郷町某所

 知人の屋外施設にルリカケスが営巣をしているというので見にやってきた。ルリカケスは賢い鳥で、人工建造物を営巣場所によく使う。人と着かず離れずの場所で暮していれば天敵が近づきにくいことを知っているかのようだ。

 営巣場所は2か所あるという。ひとつはカヌーの中。冬の間ほとんど使わないカヌーはルリカケスに取って恰好の営巣場所に見えたようだ。教えてもらって近づくと、すぐにカヌーの中から2羽のルリカケスが飛び出してきた。そのうち1羽はすぐにカヌーの中へと戻り、もう1羽は背後の林のほうへ飛んでいった。巣に戻ったほうがメスであろう。もう脅かさないように遠巻きに観察していると、30分ほど経ってから林のほうへ逃げた1羽が戻ってきて、近くの枝に止まった。こちらがオスだろう。オスが鳴くとメスがカヌーの中から出てきて、オスのそばの枝に移動した。それを見たオスは、喉袋からなにやら餌を吐き戻し、口移しでメスに給餌をしはじめた。1回、2回、3回……何度も餌を吐き戻してはメスの喉へと押しこんでいく。じっと抱卵するメスに対するオスの心遣いなのだろう。実にほほえましい光景である。

▲上のオスが喉袋から餌を吐きだし……
▲下のメスに口移しで与える。

 もうひとつの巣は屋外トイレの上部のスペースにあるという。ここ4年連続での営巣となる。どれどれと覗いてみると、なるほど狭いスペースに造った巣の中でルリカケスがうずくまっている。メスの親なのだろう。もう少しちゃんと見ようと近づいた瞬間、メス親はすっくと立ち上がり、すごい剣幕で威嚇を始めた。そのとき巣の中からか弱い鳴き声が聞こえてきた。どうやらヒナが孵化したばかりのようだ。そのせいか、メス親は気が立っているごようす。これ以上刺激すると痛い目に遭いそうだ。そう判断して、すごすごと退散してきたのであった。

▲トイレの上部の棚に作られた巣。
▲不用意に近づきすぎるとすごい剣幕で威嚇される。
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