2005年 7月のフィールドノートから

7月12日(火) 笠利町土盛

 今週末から山階鳥類研究所の調査員が来島され、奄美大島近辺のアジサシの繁殖状況を調査することになっている。奄美海域では夏季、ベニアジサシ、エリグロアジサシ、コアジサシの3種が繁殖しているが、この中でベニアジサシは年による繁殖数の変動が大きい。幸い今年は当たり年のようで、下見したところ数箇所で繁殖が確認されている。

 その繁殖地のひとつである土盛海岸の岩礁でも100を越す営巣が確認できるが、それを観察された前園さんから面白い写真が送られてきた。足に白いフラグをつけたベニアジサシが少なくとも3羽、集団の中に含まれていたのだ。このフラグはオーストラリアのグレートバリアリーフで付けられたもの。ベニアジサシたちははるばる南半球から飛来し、奄美のこの岩礁を営巣地に選んでくれたわけだ。

 ベニアジサシにとって貴重な繁殖地であるが、実はここは危険と隣り合わせでもある。すぐ隣が有名な海水浴場であり、観光客や地元の釣り客・貝拾いの人などがよく岩礁まであがってくるのだ。繁殖期に人が長い時間居座ったりすると、ベニアジサシは繁殖を放棄してしまうことがある。以前、笠利町に申し入れて立ち入り禁止の看板を立てたものの、指定された設置位置が岩礁から遠く、ほとんど機能していない。ベニアジサシの繁殖地の少なさを考えたとき、再度、もっと積極的な保護策を考える時期に来ていると思う。日本の観光客も大事だろうが、遠路オーストラリアからの客はもっとねぎらってしかるべきであろう。

▲はるばるオーストラリアからやってきたフラグ付きのベニアジサシ(写真:前園泰徳さん)。

7月15日(金) 瀬戸内町赤瀬

 山階鳥類研究所の方々と一緒に奄美海域のアジサシの調査。この海域最大のベニアジサシの繁殖地と思われる赤瀬に上陸した。いまは抱卵期のようでほぼ300巣が確認された。ここはときおり釣り人が上陸するので、それがベニアジサシにとって脅威だと考えられるが、もうひとつ気になることが。卵が何者かにより食害を受けているようなのだ。こんな岩礁にもネズミが棲みついてしまったのだろうか? 食害卵と動物の糞らしきサンプルを持ってきたので、識者に分析してもらう必要がある。

 この赤瀬ではここ数年、マミジロアジサシが確認されている。今年は数百のベニアジサシに混じって6羽を確認。人が近づくとさかんに警戒しているので、繁殖している可能性は高い。残念ながら今年も営巣を確認できなかったが、マミジロアジサシの繁殖の北限地はいずれ更新されるに違いない。

▲赤瀬の岩礁で休むマミジロアジサシ。

7月20日(水) 名瀬市自宅

 昨年の10月25日付けのこのページに書いた幼虫がようやく羽化した。ルリカケスの巣箱の中で巣材を食べていたのは、ズバリ、リュウキュウオオハナムグリでした! これで謎がひとつ解けました。

▲飼育容器で羽化したばかりのリュウキュウオオハナムグリ。