2005年 8月のフィールドノートから

8月2日(火) 龍郷町瀬留

 アマミクサアジサイがぼちぼち咲いてるんじゃないかと期待して、観に来た。まだ三分咲きというところだが、いくつかの小さな紫色の花が確認できて嬉しくなる。梅雨時北鎌倉の寺院などで見るアジサイも美しいけれど、やっぱり野生種のほうが可憐だな。でも、この奄美固有種の植物も園芸採取や森林伐採により激減しているらしい。いたましいことだ。

▲小さな花がいくつかひらいたアマミクサアジサイ。

8月10日(水) 沖縄県硫黄鳥島近海

 海鳥の調査のため、平土野港から船をチャーターし硫黄鳥島近海までやってきた。この島で採取される硫黄は琉球王朝が中国と交易を結ぶにあたって重要な貢物だった。ということで、琉球王朝がこの島をずっと支配下に置いていた経緯があるために、緯度的には奄美海域にありながら、いまも硫黄鳥島は沖縄県に属している。沖縄県の最北端の島である。とはいえ、もっとも近い徳之島からでも60km以上はなれているこの島は、まさに絶海の孤島。周囲が切り立った断崖で囲まれた火山島は、あたかも人の接近を拒絶しているかのようである。上陸して調査すればおもしろい発見もありそうだが、今回の目的はそんなことではない。アジサシ類が繁殖していないかどうかを海上から観察するも、その気配は残念ながら感じられなかった。岩礁にクロサギ、上空にミサゴの姿が確認できたのみ。

 それにしても近海にはオオミズナギドリやアナドリが多い。オオミズナギドリはわからないが、アナドリはたぶん硫黄鳥島で繁殖しているのだろう。さらに沖合いでは全身真っ白なカモメのような鳥が海に浮かんでいるのを目撃。揺れる船の上からの観察だったので、しかとは識別できなかったが、ネッタイチョウであることは間違いないだろう。上面に黒い斑は見当たらなかったような気がするので、アカオネッタイチョウか。もっとゆっくり観たかったなあ。

▲硫黄鳥島(上:南西からの全景、下:西からの全景)

8月27日(土) 名瀬市金作原

 金作原の森を歩いていると、足元に見慣れない虫を発見。身をかがめてよく観ると、キオビエダシャクの羽化直後の個体だった。翅が伸びきっていないために、青緑に金属光沢を帯びた体ばかりが目立ち、よもやガとは思わなかったのだ。見る見る間に翅が伸びて、きれいな新成虫のできあがり。見慣れた生き物からも発見はある。

▲翅が伸びる瞬間のキオビエダシャク。
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