2016年 11月のフィールドノートから

11月15日 奄美市名瀬 金作原

 金作原のモニタリング1000森林サイトでの今年最後のピットフォール調査(本調査についてはこちらを参照ください)で、はじめてアマミコカブトが捕まっていた。肉食性の甲虫としては、奄美では最大の種といえるだろう。接写すると、小さな角がかっこいいのだ。

▲亜種アマミコカブトのオス。ピットフォールトラップに落ちているときはクワガタムシのメスかと思った。
▲頭盾はないけれど、小さな角と前肢脛節外側のギザギザがダイコクコガネを想像させなくもない。

11月23日 加計呂麻島 諸鈍

 勤労感謝の日の今日は瀬戸内図書館・郷土館主催の探鳥会。奄美野鳥の会のメンバーはここに講師として参加した。今年は冬鳥の渡来がやや遅い気がするが、加計呂麻島最大の探鳥地諸鈍には、ミサゴ、カワセミ、コゲラ、リュウキュウツバメ、サンショウクイなどの留鳥にまじって、サシバ、チョウゲンボウ、ウグイス、ジョウビタキ、マヒワ、ギンムクドリなどの冬鳥の姿もちらほら。シロハラやアオジがいないためにまだ鳥の絶対数は多くはないけれど、そこそこの種類の野鳥を観察できた。ふだんは参加者の高齢化が気になる探鳥会であるが、今回は図書館主催で子どもたちの姿も多く、賑やかな催しとなってよかった。

▲水路の魚を狙うカワセミのオス。子どもたちの人気の的だった。
▲捕まえたバッタを食べるチョウゲンボウのメス。
▲今年はスダシイやオキナワウラジロガシの実が不作だが、アマミアラカシはたくさんどんぐりをつけていた。

11月30日 奄美市名瀬 古見方

 今日一日予定していた山での調査が早めに終わったので、古見方になにか珍しい鳥でも来ていないか、のぞいてみることにする。勘が当たって、大川に大きな水鳥を発見。オオハクチョウの幼鳥である。オナガガモやヒドリガモにまじって悠然と泳いでいる。コハクチョウはこれまでにも何回か記録があったが、オオハクチョウは珍しい。石垣島でも40年ぶりに観察されたとかで、先週日本を襲った寒波の影響かもしれない。

 さらに小湊集落の裏の水田に回ってみると、オカヨシガモやコガモとともに8羽のヒシクイを発見。やはり寒波の影響だろうか。どうやら亜種ヒシクイと亜種オオヒシクイが交じっているもよう。そっと近づいて観察していると、反対方向から白い軽トラックがするすると近づいてきた。ヒシクイの至近距離で停まるので同好の志かと思っていると、運転席から降りた男の手にはなんと猟銃が握られているではないか。70歳前後と思われる男は悪びれもせずに銃を構えると、散弾を立て続けに二発発砲。驚いたヒシクイやカモたちは一斉に飛び立ったが、2羽のヒシクイが水田の中でばたばたと翼を動かしてもがいている。狩猟鳥ではない天然記念物を狙っての猟、しかも集落から100メートルほどしか離れていない農道からの射撃であり、ハンターを示す帽子も着用していない。あまりにも横暴な違法ハンターである。すぐに小湊駐在所に駆けこんだがあいにくおまわりさんは巡視中でおらず、奄美警察署に電話連絡して事情を説明する。10分ほどでおまわりさんが帰ってきたので、一緒に現場に戻ったが、すでに違法ハンターの姿はなく、ヒシクイも回収されたあとだった。奄美警察署の担当刑事も到着したので目撃情報を詳しく伝え、現場検証を行うも、車のナンバーを控えていなかったことが失敗で、ハンターを特定できるかどうか、かなり難しいところだという。はるばる奄美まで渡ってきてのんびり休んでいたヒシクイの無念たるやいかばかりか。違法ハンターに天罰の下らんことを!

▲大川で悠然と泳ぐオオハクチョウの幼鳥。
▲小湊の水田でヒシクイ8羽の群れを確認。右端は亜種オオヒシクイ、右から2番目は亜種ヒシクイと思われる。
▲観察をしていると、違法ハンターがやってきて散弾銃を発砲。2羽のヒシクイが犠牲になってしまった。