3月6日 瀬戸内町海上
53回目の誕生日であるこの日、奄美クジラ・イルカ協会主催のザトウクジラ全島一斉調査に参加させてもらえることになった。奄美大島周辺海域を6つのエリアに分け、それぞれ調査船で巡航しながらクジラをカウントしていくという調査だ。かねてから興味のあった加計呂麻島-与路島-請島海域を担当するアクアダイブコホロの太田健二郎さんの船にお世話になることにし、8時45分に油井集落の浮き桟橋に集合。時間通り、9時に調査船は出港した。
大島海峡を西に進み、ベニアジサシの繁殖地でもある赤瀬沖が最初のポイント。クジラの姿は見えないが、沈めた海中マイクは複数のザトウクジラのソングをはっきりと拾っている。近くにいることがわかり、いきなりテンションが上がる。天気に恵まれ、波のない絶好のコンディションの中、船を停めて30分ほど待つが、なかなか姿を現さない。このポイントは断念し、夕離近くの次のポイントへ移動する。ここでも海中マイクを通じてクジラの声は聞こえるものの、姿は確認できない。いるとわかっているのに観ることのできないもどかしさが募ってくる。ひと目でも観たいという渇望感が湧き起こる。
渇きはそのあと癒された。次のポイントである与路島のほうへ移動する途中、太田さんがザトウクジラの尾びれを確認したのだ。一路確認地点へ向かっていると、いきなり至近距離に巨大な背中が現れて一同びっくり。あまりに急なできごとだったため、誰も写真を撮ることができなかった。そこで船を停めて待つ。と、数百メートル先にザトウクジラの尾びれが出現。よく見ると、子連れのようだ。調査船の甲板から歓声が上がる。このザトウクジラの母子はとても愛想がよく、そのあと何度も姿を現してくれ、十分に堪能できた。
帰路には夕離沖で別の1頭を確認し、本日の確認数は2群3頭。6隻の調査船により奄美大島海域全体での合計確認数は9群13頭だったそうだ。奄美でのザトウクジラの生息実態がようやく少しずつ明らかになってきた。調査が継続して行われることを望む。
3月12日 奄美市某所
オオトラツグミのさえずり一斉調査が近づいてきた。分担された調査エリアの下見を終えて、新緑の森に入る。目当てはこの時期に花を咲かす幻のランだ。林道をたどり、道なき道を拓き、斜面を下ること数十分、幸いにもケイタオフウランは満開に近い状態だった。可憐なこの花を見るだけで、疲れは吹き飛び、幸せな気分に満たされるのだった。