2014年 9月のフィールドノートから

9月3日 奄美市笠利町万屋

 奄美野鳥の会の仲間からヒメクイナが入っているという情報をもらった。ヒメクイナは稀に奄美を通過する迷鳥で、これまで二度観ているがいずれもすぐに隠れてしまい、じっくり観察できていない。いたとしても観られるとは限らないので、あまり過度な期待はせずに来島中だった鹿児島大学野鳥研究会の学生ふたりとともに観にいった。教えてもらったのは灌漑用の小さな浅い貯水池で、過去にレンカクが入ったこともある。車をゆっくり進ませると、まず観えてきたのはセイタカシギ。優雅に餌を探している。目的のヒメクイナはというと、いました。池の縁でこれもまた餌を探している。セイタカシギと比べるとその小ささがよくわかる。日射しの降り注ぐ開水面にもかかわらず、ヒメクイナはおそれるこなく懸命に採餌している。おかげで今回は心ゆくまでじっくりと観察できた。

▲明るい場所に出てきて餌を探すヒメクイナ。

9月30日 瀬戸内町高知山

 過去9月の高知山ではキタヤナギムシクイやコムシクイが出ている。今回もそれを期待して、29日からバンディングをしているが、捕まるのは留鳥ばかりである。二日目に期待して網場にやってきたところ、珍鳥ならぬ珍蝶ならぬ珍蛾を発見。ハグルマヤママユである。翅がぼろぼろの個体は過去に観たことがあるが、こいつは左前翅の先端が少し欠けてはいるものの、ほぼ完全な美しい個体である。これまでこのガの名前を深く考えたことがなかったが、ハグルマとは歯車のことで、翅の模様からきていることが、じっくり観察してみてはじめてわかった次第。

▲木製のテーブルにとまっていたハグルマヤママユ。
▲翅の拡大。眼状斑の周りの黒のラインがなるほど歯車のようである。