2020年 11月のフィールドノートから

11月6日 龍郷町秋名

 奄美野鳥の会の会員から、秋名にカナダヅルが来ているという連絡を受け、さっそく駆けつけてみる。奄美にもときおりナベヅルやマナヅルが飛来することがあるが、カナダヅルは初めてである。世界のツルの中で最も個体数が多く、出水にも毎年数羽が入っているので、奄美までやってきても不思議はないが、やはり観ておきたい。秋名の水田地帯を車でゆっくり探して回ると、いました。出水で観るより警戒心が薄く感じるのは、長旅で疲れているせいか。たくさん食べて、早くお帰り。

▲カナダヅル、ペアか?

11月10日 宇検村湯湾

 河内川でのカワウ調査を終え、堤防沿いを歩く。大きめのシジミチョウが目に入った。ショウガの仲間を食草とするシロウラナミシジミだ。近年北上している種らしく、サキシマフヨウの花から吸蜜していた。撮影をしていると、すぐ近くにクロセセリが止まった。このチョウの食草もショウガの仲間。この付近、ハナシュクシャが多いので、そこから発生しているのかもしれまし。タンカン畑にはツマムラサキマダラがひらひらと舞っていた。焼内湾に面した貯水池でキンクロハジロやオオバンを観察していると、上空に大きな鳥が。ミサゴだ。海面にボラでも見つけたのか、翼をたたんで急降下していったが、残念ながら狩りは失敗に終わった。

▲サキシマフヨウから吸蜜するシロウラナミシジミ。
▲翅が三角形でジェット機のようにも見えるクロセセリ。
▲タンカンの葉に止まったツマムラサキマダラ。
▲急降下して海面に飛び込んだミサゴだったが……。

11月14日 奄美市笠利町笠利崎

 今年からバンディングの実技講師となり、沖縄から初めての講習生を迎える。笠利崎では次々にメジロがかかる。本土から渡ってきた亜種メジロも捕まったので、亜種リュウキュウメジロとの違いを両亜種を並べて検討する。次の見回りのときにもまたメジロが何羽か捕れている。講習生に網から外すように言って先に行かせると、なんだか大声で叫んでいる。メジロごときでなにを騒いでいるのだろうと近づいて、自分も思わず声を上げてしまった。なんとチョウセンメジロが捕れているではないか。足環をつけた後、リュウキュウメジロと並べて、両種の違いを確かめる。チョウセンメジロには脇に柿色の斑があるのは当然だが、嘴の基部が薄いピンク色で、虹彩は濃いめ。上面緑色はメジロよりも明るく、体形もスマートだ。翼の形もP8に対するP9の長さはチョウセンメジロのほうが長い。講習生とともに学習でき、よい経験となった。

▲左がリュウキュウメジロ、右がチョウセンメジロ。

11月17日 奄美市名瀬のとある池

 某林道脇の池で水生昆虫調査。ヒルムシロやタヌキモの生える自然度の高い池で、マルタニシが生息している。久しぶりにオオミズスマシも確認したが、個体数は少ない。アメンボは普通種のアマミアメンボ。夕暮れが迫ってくると、1頭のヤンマが現れて産卵をはじめた。カトリヤンマが命を次代に繋ごうとしている。奄美大島も状態のいい池は壊滅状態だが、このような環境がいつまでも続きますように。

▲ヒルムシロが浮かぶ水面。
▲アマミアメンボのメス、長翅型。
▲産卵するカトリヤンマのメス。
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