2002年 7月のフィールドノートから

7月1日(月)晴れ 自宅&中央林道

 今日は嬉しいことがふたつあった。

 まずひとつはタイワンカブトムシがついに羽化したこと。この虫はオスメスともに頭に角を持っているので、一見しただけでは性別がわからないが、腹部に毛が少ないのでオスだと知れる。堆肥の中から幼虫をゲットしてから8ヵ月半、意外と長くかかったものだ。

▲1頭だけ羽化したタイワンカブトのオス。

 嬉しいことの二点目は夜。夜の林道をしょっちゅう走っていると、ときどきよいことがある。今晩はたくさんのクロウサギに逢うことができ、そのうちの1頭はまったく人を恐れない個体だったので、じっくりとビデオで撮影することができたのだ。落ち葉を食べる姿をしっかり記録できた。

▲幅の広い落ち葉(ホウロクイチゴか?)を一心不乱に食べるアマミノクロウサギ

7月14日(日)曇り 中央林道付近の森

 最近さっぱり鳥を観に行っていない。というのも、夏の時期は昆虫が面白く、しかも7月上旬といえば、憧れのフェリエベニボシカミキリの発生期にあたるからだ。一昨年も昨年も見逃しているので今年こそはと山に入るが、フェリベニの姿はなかなか見当たらない。そもそも7月といえば梅雨明け直後の奄美は最も天候が安定した季節のはずなのに、今年はどういうわけだか立て続けに台風が来ており(直撃こそないものの7号で4つ目!)、虫探しには条件がよくないのだ。7号の接近で今日も決して条件はよくないが、雨が降っていないのでとりあえず森に出かけた。

 何箇所かのフェリベニのポイントを回るが完全にスカ。肩を落として帰る道で、落ち葉の間に何か微妙な違和感を感じる。よく見たら、ヒメハブがとぐろを巻いているではないか! 体長50cmくらいの小物であるが、なかなか威圧感がある。少しでも近づくと鎌首をもたげるところなど、小さいながら貫禄十分。飛び掛られないように2mほど離れて撮影した。

▲最初はてっきりハブだと思った模様が複雑なヒメハブ。枯れ葉に紛れると見つけにくいので要注意。

7月20日(土)晴れ 名瀬市朝戸峠

 17日から4日間、朝戸峠でバンディング調査を実施。毎日朝5時から8時、夕17時から20時でかすみ網を張ったが、時期と場所が悪いのかあまり鳥がかからない。ここまでのところ17日の朝にメジロ1、18日の夕にアカショウビン1、きょうの朝リュウキュウコノハズク1という間延びした調査である。鳴き声を流せばひっかかりやすくなるかもしれないと考え、最終日のきょうの夕方になってメジロとサンコウチョウの声をMDで再生した。すると間もなくサンコウチョウの幼鳥がかかった。

▲サンコウチョウの幼鳥は目の周りにコバルトブルーが出ず、尾羽も短い。これはオス。

7月23日(火)晴れ 笠利町の池

 去年の夏、フチトリゲンゴロウをつかまえた池で再度の幸運を期待する。去年に比べると水嵩があり、とても池の深い部分までは網が届かない。池の縁ではトビイロゲンゴロウがうろうろしている。このゲンゴロウは南西諸島固有種であるが数は多い。ときどき呼吸のために浮かんでくる大型ゲンゴロウはのはヒメフチトリゲンゴロウやコガタノゲンゴロウのようだ。どちらも希少種であるが奄美大島では比較的たくさん見かける。見かけないのはフチトリゲンゴロウ。小一時間ほど観察を続けたが、それらしい姿は見られなかった。諦めてトンボの撮影をして帰る。

▲ひらひらと飛ぶ姿がチョウを思わせるベッコウチョウトンボ
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