2007年 5月のフィールドノートから

5月4日(金) 奄美市笠利町万屋

 ここ数日万屋農耕地はオガワコマドリで賑わっていた。他の用と重なって観に行けず、3日遅れで来てみたが、さすがにすでに抜けてしまったようだ。残念。

 最近コマミジロタヒバリとマミジロタヒバリが下りていた畑に、今日はツメナガセキレイが数羽いる。眉斑が黄色の亜種キマユツメナガセキレイ、同じく白色の亜種マミジロツメナガセキレイ、かすかに白色が入る亜種シベリアツメナガセキレイ。ハクセキレイやツメナガセキレイでは複数亜種を同時に観ることがよくあるがこれはいったいどういうことなんだろう? 亜種とは種内の地域変異であるはずなのに、一緒に行動しているのだ。渡りの途中だけに見られる現象なのか、それとも案外このまま一緒に渡っていくのか? 後者であれば、亜種の定義に反するわけだが……。

 同じ畑にはキガシラセキレイのメスやキセキレイもいて、さながら黄色いセキレイの品評会の趣であった。

▲亜種キマユツメナガセキレイは国内で繁殖している唯一の亜種。

5月9日(水) 大和村宮古崎

 奄美に来るまではGWといえば日本海側の離島へ渡り鳥を観にいっていた。この時期の離島は珍鳥・迷鳥が出やすいからだ。

 GWだけで、対馬に4回、見島に2回、舳倉島に1回、粟島に1回、飛島に5回行っている。これだけ経験を積めば、かなり珍しい鳥にもいろいろとお目にかかっているが、なぜか中にはさっぱり縁がない鳥もいる。先月ようやく観ることができたコシャクシギもそうだったけれど、もっと徹底的にすれ違っているのがシロハラホオジロだ。この鳥は上記の島に行った際のほとんどで他のウォッチャーは観ているのに、なぜかボクだけは観ることのできない、完全に「嫌われている」鳥である。こんどこそはこの鳥を観ようと、このGWはトカラ列島の平島まで行こうと企んでいたが、仕事が入りそれも挫折。初邂逅は来年以降へ持ち越しかと思っていたのだが……。

 この日は北海道から南西諸島のササを観たいいらっしゃったお客さんを案内してのガイド。タケとササの区別もよくわからないボクに相手ができるだろうかと心配しつつも、メダケ属(ササ類)の自生&栽培ポイントをいくつか案内し、最後の目的地としてリュウキュウチクの群落がある宮古崎を選んだ。ここは奄美大島随一の笹原が広がるポイントであるが、アクセス道路が悪いので、めったに足を踏み入れることがない。ボクも4年ぶりの訪問だった。岬の入口に車を止めて歩くこと20分、ぼちぼち笹原が近づいてきたリュウキュウマツの林で、チッ、チッと金属的な響きを帯びたホオジロ科の地鳴きが聞こえる。あまり聴いたことのない声だなと思っていると、目の前に当の鳥が姿を現した。なんと夢にまで見たシロハラホオジロなのである。平島まで足を運ばなくとも、近場に現われてくれたのである。あまりの嬉しさに、しばしガイドを忘れて見入ってしまった。その夜のビールの美味いこと!

▲ビデオにはなんとか証拠写真程度の画が数秒間映っていました。これはシロハラホオジロのオス。
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