2013年 1月のフィールドノートか

1月7日 宇検村湯湾&龍郷町秋名

 年末から情報があったものの島を離れて観にいけなかったメジロガモを見に行く。場所は湯湾集落にあるさほど大きくもない池である。かつて埋め立てをする前は焼内湾の最奥部のここには干潟が広がっており、さまざまな海鳥が飛来していたと聞く。そのときの名残なのか、何の変哲もない池なのに、ときどきあっと驚く珍鳥が紛れ込む。目当てのメジロガモはすぐに見つかった。ホシハジロやオオバンの近くでのんびり泳いでいる。カモにしてはかなり地味な色合いだが、名前の通りの白い目がよく目立つので、遠くからでもよくわかるのだ。

 運動公園のグラウンドに行くと、シロハラやツグミにまじって、奇妙なツグミの仲間が1羽、さかんに餌を食べている。全体的な印象はハチジョウツグミなのだが、胸の模様はノドアカツグミで体型はやや寸詰まりな印象である。おそらくノドアカツグミとハチジョウツグミの交雑種なのだろう。2年前に奄美に飛来したノドグロツグミは亜種ノドグロツグミと亜種ノドアカツグミの交雑種だった。今回の個体がノドアカとハチジョウの交雑種だとすると、種としてのツグミとノドグロツグミはかなり近縁と言えるかもしれない。

▲メジロガモは1993年の福岡県大濠公園以来、20年ぶりの再会。
▲ノドアカツグミとハチジョウツグミの交雑個体と思われる変わったツグミ。

 午後は宇検村から一路龍郷町へ移動。奄美野鳥の会のメンバーが「元旦に変なツグミ」を観たと聞き、その実証検分に赴いたのだ。今シーズンはツグミ類が多いので、いたるところにツグミやシロハラが下りている。珍しいヤツはいないなあ、と諦めかけたときに、予想もしなかったツグミを観て双眼鏡を持つ手が震えた。なんとノハラツグミである。体は大きいくせにツグミに喧嘩を吹っ掛けられている。畦道から舗装道路脇に移動した珍鳥は、車に追いたてられるようにして、どこかへ逃げ去ってしまった。

 もっとちゃんと撮影したいと、農耕地を探しまわっていると、またしても別の珍鳥を発見。ズグロチャキンチョウのオスである。かつて奄美で観たことがあるが、そのときはメスだったので、オスは初めてとなる。アオジと一緒に草の実を真剣についばんでいるのをじっくり観察できた。

 しかし、今日はなんという日だろう。珍鳥ばかりの一日である。長く鳥を追いかけていると、こんな日もあるんだなあ。

▲ノハラツグミは1988年の神奈川県伊勢原以来、25年ぶりの再会!
▲ズグロチャキンチョウは警戒心が薄く、一心に草の実をついばんでいた。

*番外編*1月17日 沖縄県やんばる

 山階鳥類研究所の冬鳥モニタリング調査の手伝いでやんばるに来た。今季は冬鳥が多いが、やんばるの森でもシロハラやクロジ、ルリビタキの姿をよく目にする。麓ではウソも確認されたらしい。とはいえ、やんばるの森の主役はやはり固有種の鳥たちだ。1月だというのに、ときおり亜種ホントウアカヒゲがさえずっている。こつこつと木をつつく音はノグチゲラだ。姿を観られればラッキーと思っていたら、運よく目の前の木に飛び移ってきた。メスではあるが、黒褐色と赤色の配色が美しく、しばし見入ってしまう。オスはよく地面に下りるので嘴が土で汚れているが、メスはそんなことはないと聞いた。なるほどこのメスの嘴にも土は付着していない。オスとメスとでの食性の違い……果たして奄美大島のオーストンオオアカゲラでもそんな事例はあるのだろうか。

▲エサさがしに躍起になり、こちらに気づいていないようすのノグチゲラのメス。

1月20日 奄美市宇宿

 宇宿漁港で冬恒例のムネアカタヒバリがいないかと探していると、なにやら違うシルエットの鳥が何羽か固まって短い草の生えた地面を歩き回っていた。6羽のヒバリである。奄美ではヒバリと言えばセッカのことを指す。つまり本物のヒバリはそのくらい少なく、たまに渡り途中の個体を単独で見かける程度なのだ。6羽も一緒にいるのは初めて見た。小群になって同じ方向に歩きながら餌をつつき回る姿は、なるほどタヒバリに似ているかもしれない。

▲タヒバリよりもヒバリのほうが警戒心が強いのだろうか。距離を縮めると、その分だけ離れていく。
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